日本でもインドでも『「ヘルシーで美味しいものが食べたい」に応える』に商機あり

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インドの若者の間で、お肉の量を減らしたり、ベジタリアンへ転向したりする人が増えている。

中間層や富裕層の間でブームになっている健康志向への高まりは、緑茶の需要増を経て、新たな局面に入ったようだ。

一説には、肉や魚介類を食べるノンベジタリアンから菜食(ベジタリアン)へ転向した割合が、数年前と比べて3割以上増えたといわれており、この傾向はしばらく続くものとみられている。

デリーのインペリアルホテルでエグゼクティブ シェフを務めるVishal Atreya氏は、「この傾向は宗教的なものではなく、健康志向が一層進んだ結果だ」と断言する。

インド人と言えば、小柄でスリムな人種を思い浮かべるかもしれないが、今や肥満が深刻な問題になっている。

富裕層やアッパーミドル層にとって、給料の良い総合職に就き、車を持つことは一種のステイタス。しかし、脂肪分の高い乳製品を多用するインド特有の食生活ゆえ、やっと手にした念願のライフスタイルには「運動不足=肥満」が付いて回る。

特に、肥満からくる糖尿病患者数は2012年時点で6,300万人ともいわれ、2020年には8,000万人に、2030年には1億人を突破すると予測されているほどだ。

(インドの糖尿病患者に対する日本企業の取り組みついてはこちら

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そこで、注目されているのが低脂肪・高繊維の食生活。

ウェスティングループが運営するムンバイ ガーデンシティのエグゼクティブ シェフ Ajay Chopra氏は、「菜食は減量やコレステロール値の低下だけでなく、がんのリスクを低下させ長寿につながる。元来、インド人の消化器は菜食に向いていた。」と解説する。

また、インド国内13都市とドバイで26店を展開する老舗ベジタリアンレストランCream CentreのKiran Ravi氏は、「これこそがCream Centreが58年も続いている理由だ。」と力説する。

菜食への人気は、外食産業にも飛び火し始めている。

ノンベジメニューを主体としていたレストランが、次々にベジタリアン料理を増やしているのだ。

すでにメニューの半数をベジメニューに切り替えたというレストランや、オーダー構成がこれまでのノンベジ優勢からベジ優勢になったというレストランも。とはいえ、ノンベジタリアンにとってベジメニューは「味気ない」「物足りない」料理といったマイナスのイメージもあるようで、それを払拭する魅力的なベジメニューの開発も加熱している。

世界各国の調理法や調理技術を取り入れて、競争の激しいこの業界で優勢を得たいという思惑もあるのだろう。

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以前に紹介したデリーのベジ専門レストランSattvikoは、インドでは最新の分子料理を取り入れたり、インドに古くから伝わるアーユルヴェーダをベースにしたインド料理を紹介したりするなどして、グルガオンで人気の創作インド料理店Farzi Caféに攻勢をかけている。

前述したインペリアルホテルのAtreya氏は、クオリティの高い新しい料理を提供し続けることが最も大切だと言う。

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インペリアルホテルのレストラン1911では、日曜のブランチに「マイクログリーン」という発芽して2週間〜1ヶ月程度の若い野菜の芽を提供しているそうだ。

育成中の温度や環境の管理が難しく苦難もあったが、提供し続けてきたことでインペリアルホテルの名物として、今、このベジブームを支えている。

新たなベジメニュー開発には、食材選びも重要だそうだ。

インドでは珍しい外国産の食材をメインに据えれば、それだけでキャッチーな一皿にもなりうるし、より本場の味に近い料理を提供できたりもするからだ。

最近は、インドで比較的新しい食材に分類されるアボカドやズッキーニ、ブロッコリーやチェリートマト、生アスパラガスはもちろんのこと、最新の外国産のチーズやフルーツ、スパイスなどに注目が集まっている。

「わさび」も最新の食材として注目されているものの一つだ。

Atreya氏は「食材の選び方一つで、いつものメニューがワンランク上の料理になる。例えば、ヨーロッパ産の柔らかいホワイトアスパラを使えば、国産アスパラを使った時とは味も歯ざわりもまるで違うものになる。」という。日本でも、フレッシュなイタリア産のポルチーニ茸を使ったパスタはひと味もふた味も違った、なんて経験をお持ちならご納得いただけるだろう。

このようなトレンドを背景に、外国産野菜を産地から直送したいというニーズも増えてきているそうだ。特に、若いシェフには外国で学んだり働いたりしてきた海外経験者が多いため、外国産野菜を使うことに抵抗がないのだとか。

そこに目を付けたTrikaya Agriculture Pvt Ltdは、外国の野菜をインド西部のプネ郊外で栽培し、ムンバイにある90のホテルと5つのレストランに卸して売上を伸ばしている。

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ひと味ちがった ベジメニューを創作するため、常に外国産の新しい食材にアンテナをはり、そこからヒントを得るやり方もあれば、世界各国の料理法にヒントを得るやり方もある。

ムンバイにあるベジレストランVedgeのSawant氏は、「既成概念にとらわれない新しい発想が、味わい豊な料理の世界へ誘ってくれる」と考え、北インド料理、南インド料理、イタリア料理、アジア料理、中華料理、メキシコ料理など様々な料理の新旧を組み合わせて新しい料理を提案してきた。

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新しいレシピの開発は試行錯誤の繰り返しで、時間もコストもかかる。しかし、まだ世の中にないワクワクさせるような料理を創ることは、シェフにとってやりがいのある仕事であり、腕を試される仕事でもある。どれほど魅力あるベジを提案できるかによって、店の命運を分けることにもなるかもしれない。

健康志向に端を発した、ベジタリアン・フュージョン料理の開発は、ベジタリアンフードの価値を上げる試みにまで拡大している。この動きは、レストランの経営陣にとっても無視できない存在となりつつある。

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